大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)11826号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告会社は、原告相沢の受傷のため、同原告の労務の提供を受けることができなくなり、代替員の早急な補充が望めぬまま、処理量が減少し、しかも他の担当者の労働量が増大する結果を招いたため、一名の退職者まで出し、原告会社としては得意先を失い、金額にして金一〇三万円の減収となつた旨主張し、<証拠>には一部その趣旨に添う部分があるけれども、<証拠>によると、原告相沢の職務は若干の技能を要するものの、新制高校卒業の、なんら公的な資格を有しない同原告により遂行されていたものであり、しかも同原告は原告会社において管理者的地位にまつたく就いていないことが認められ右認定を覆えすに足りる証拠はないので、原告会社において人員配置によろしきをうれば、原告相沢の受傷のため、原告会社が主張のような損害を蒙ることはなかつたものと判断できるので、<証拠>により、原告会社の損害が本件事故と相当因果関係をもつものとは断じ難く、他に原告会社の主張を証するに足る証拠もないので、原告会社の損害を本件事故に起因するものとする主張は認容することはできない。

しかも、原告相沢は右認定のとおり原告会社の代表者ではないところ、一般に自然人に非らざる法人という形態が法規上認められるのは、それを構成する人員の総集積値とは異る、これをこえる価値を生む実態を有することを基盤にしてのことで、従つて、法人は自然人たる労働者より対価たる賃金相当分の労務の提供を受けつつ、その内在する能力をあわせて、より高い価値を生み出すのであるから、労働者の不就労による損害は、法人としては本来対価たる賃金相当分にとどまるのである。ただ、右のような実態を有しないのに税対策等で法人化したものについては、代表者の不就労が、対価分以上の損害を生む余地は考えられるが、本件においては右のとおり代表者でもない原告相沢の受傷にすぎず、しかも原告会社として、休業中の原告相沢に対し、なんら賃金を支給した事実を主張立証していない以上、原告会社の損害を認めうる余地はないものといわなければなければならない。(谷川克)

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